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慈光通信 第224号

2019.12.1

食物と健康 5

 

前理事長・医師 梁瀬義亮

【この原稿は、1991年1月 日本有機農業研究会発行の「梁瀬義亮特集」に掲載されたものです。】

 

3、食物と健康

 

これにはまず、(1)生まれつきということが非常に大きい要素なのです。この生れつきということのなかには、その人の本来もっておる、いわゆる本当の意味の生まれつきと、(2)母親が妊娠中にどんな食物をとったか、ということが相当大きな影響があると考えられる。
母親の妊娠中の栄養については、大阪大学の片瀬先生の広範な実態の報告を拝見しております、がこれが大きい意義をもつ。
(3)体格のよしあし、大きいとか太っているとかいうことと、健康とか寿命とかいうこととは別問題であるということに気付いたわけです。
それから、(4)は、白米ばかりたくさん食べる習慣がある人。また地方などを調べたのですが、多い地方では1日にだいたい5合から6合の白米をたべて、お菜をうんと少なく食べる。白米ばかりたくさん摂って、菜食をしない人は、非常に肥満体になったり、動脈硬化が多かったり、リューマチになりやすい。病気が多く短命になる。
当時、昭和22年から23,24年は、日本人は終戦後の飢餓状態で、厚生省は動物性蛋白をすすめておったのです。動物性食品が、非常にすすめられていた時代です。しかし、(5)肉食やその他の動物性食物と白米だけを摂って、脂肪、蛋白、含水炭素、いわゆる三要素だけが十分な食生活をしている人(当時は理想的な食生活といわれていたものですが)、この人は体は大きくなるけれども、非常に多病であって弱い。結核患者についても体は相撲取りみたいに太るけれども、中の肺は一向によくならない。こういうことに気付いて来たわけなのです。
それから、(6)肉食をたくさんとりながら、あるいはその他の動物食をたくさんとりながら、同時に野菜もたくさん食べる人はどうだろうか。これもやはり非常に病気が多い。
また、(7)麦飯を食べることによって、麦のたくさん入った飯をたべることによって、健康が非常に回復してきた、という例を多く知りました。
それから、(8)野菜・海藻をたくさんとる。大豆やイモ類もふくめて、たくさん野菜・海藻を食べる。こういった人は強く、病気にならない。当時昭和23年から27年にかけては、むしろ逆に言われておって、動物性脂肪、蛋白だけあればよいと社会一般に信じられて、私もそう思っておった。ところが、そうではなくて、野菜・海藻を食べる人が強く丈夫である。肉食過多の人は肉食を止めることによって、病気が減ってくる、ということに気付いた。
当時としては、私にとっても異常な思いがけない経験だったわけです。これはそうとうたくさんございました。
また完全に動物性のものを食べない、純植物性食品のみの場合、これは体格が大きくならない。貧弱である。しかし病気には割にならない。こんなことも傾向として知りえたわけです。
(9)果実については、果物というと、一般に非常に栄養に富む好い食物だという印象をもっておられる人が、特に都会には多いのですが、果物は野菜の代わりにならないという事実を知ったのです。野菜をほとんど食べないが、果物はたくさん食べるおおぜいの患者さんに出会ったのです。これは決して健康ではないのです。
それから、(10)白砂糖の消費が多い場合。これは子供に多いのですが、この量の多い場合は病気は極めて多い。歯の質が悪く、扁桃腺やリューマチ、気管支炎などがまことに多い。
(11)たばこは想像以上に恐ろしいものである。1日に10本以上吸ったら、これはもうきわめて危険である。
(12)酒は、肝臓に悪いといわれてますが、むしろ胃に悪い。酒をたくさん飲む人は、みな慢性の胃炎を起こしている。もちろん肝臓にも悪いでしょうが、この胃炎のひどさを見逃しておったのだということに気付いたのです。以上のようなことを、傾向として、知ることができたわけです。

以下、次号に続く
大気中からも検出されたマイクロプラスチック

以前「進む海洋汚染」の記事の中でもお伝えした、海洋汚染の原因の大部分を占めるマイクロプラスチック(以下MP)が、ついに大気中からも発見されました。
このニュースに驚くと同時にやはり…と感じられる方も多いのではないでしょうか。
MPは微生物や魚介類等を通して、既に生態系に組み込まれ、最近では人の体内からも便10グラム当たり平均20個という想像を超える量が見つかりました。しかも飲料や食品の容器包装に使われるPET樹脂とポリプロピレンが最も多く検出されています。
体内への侵入経路は不明ですが、飲食物の包装についていたものが食べ物に付着した可能性も考えられます。そのMPが辺境の山岳地帯や北極圏の雪の中からも発見されているというのです。
MPは環境中に存在する微小なプラスチック粒子で、一般的には直径5ミリよりも小さいものと定義されますが、日本で空気や雨を採取し分析したところ、それをはるかに下回る、大きさが数十?数百マイクロメートル(1マイクロメートルは1千分の1ミリ)のポリエチレンやポリプロピレンが見つかったというのです。
発生源と疑われているものは、工業用研磨剤や洗顔料などに使用するために生産されたもの、プラスチック材料が壊れて細かい破片になったもの、衣類からの合成繊維の脱落などが挙げられますが、大気中に飛散して地球規模で移動する可能性が浮上しています。
人が飲食や呼吸を通じて体内に取り込むMPの量は、最大で年間12万1千個にも上るという研究結果もあります。日本が発表しているプラスチックリサイクル率は86%で、世界的に見てもかなり高いように見えます。リサイクルには色々な方法がありますが、日本で7割以上を占めるのは「サーマルリサイクル」という方法です。
サーマルリサイクルとは、ゴミを焼却したときに出る熱エネルギーを回収・利用するリサイクル方法です。
焼却エネルギーを使って発電し、その焼却熱を回収して火力発電に利用したり、施設の暖房や温水プールなどに供給されています。
日本ではこれが大半を占めるためプラスチック対策が進んでいるように見えるだけなのです。
このごみ焼却にはダイオキシンなどの有害物質の発生やCO2排出の増加など問題点がたくさんあります。欧米基準ではサーマルリサイクルはリサイクルには含まれないのです。
日本はリサイクルの取り組みが非常に遅れています。焼却炉に頼る今の廃棄物対策を見直すべきです。

農場便り 12月

秋本番、10月24日深夜1時、窓の外は荒れ狂う強風と豪雨。暖かい布団の中、心の中で葛藤が始まる。行くべきか、それとも…。考えれば考えるほど目が冴えてしまい、気合いと共にベッドから跳ね起きて車を農場に走らせる。フロントガラスをたたく大量の雨はワイパーに弾き飛ばされ、強風に車のハンドルが取られそうになる
畑は、豪雨が大地を叩く音と暗闇から聞こえる悪魔の叫びのような風のうなり声でまさに地獄絵図である。作物を害虫から守るネットは吹き飛ばされ空中で舞い狂う。このままでは作物の葉をむしり取られてしまい、これからの成長に悪影響を及ぼす。40メートルの畝10本分、全長約400メートルのネットは雨で重さが増し、風に揺すられ予想以上の重量となった。車のライトを畑に向け荒れ狂うネットを畝間に押さえていく。畝間にはあふれんばかりの雨水が溜まり、畑の隅の排水口からは滝のように雨水が流れ落ちる。時間と共に風は強くなり、空はうなり声をあげ、これでもかとばかりに風を吹き付ける。
雨具を付けても役に立たないならばと雨具を付けずに行う作業も、時間と共に体温が奪われ、寒さが身に応える。平素、過剰摂取しながらせっせと貯め込んだお腹の脂肪も、寒さから身を守るためには何の役にも立たない。こういう時に体を温めるには、日々の鬱憤、鬼○○などと訳のわからない悪口を大声で支離滅裂に叫ぶに限る。だがその声は広い畑にも響き渡ることなく、むなしく強風に飲み込まれてゆく。狂ったテンションは、完全に脳の回路をショートさせてしまったようである。2時間の格闘の末、すべてのネットは畝間に無事に抑え込み、取り敢えずは片づいた。
翌朝畑を確認、思いの外被害が少なかったことに胸をなでおろす。しかしこのネットをまた一からかけ直さなければならないと考えるとため息が出る。作物の生育状態は、夏期後半から雨が多く日照不足と水分過多がたたる。定植後順調に育っていたキャベツ、白菜、ブロッコリー、カリフラワーの葉の色が薄く、見た目に弱々しく感じる。光を遮る防虫ネットを外したいが、9月、まだまだ気温が高く外すことができない。水分過多も葉菜などに悪影響を及ぼし、根菜も大根などは根腐れを起こしかねない。周りの水田では雨の止み間を見て早生米の収穫が始まり、コンバインが忙しく田んぼの中を走り回る。
8月30日 播種を行った極早生大根は山の畑で悪天候にもかかわらず順調に生育を続ける。隣の小松菜は高温が災いし、発芽率がすこぶる悪く所々歯抜け状態となったが、蒔き直しはせずそのまま栽培を続ける。一日も早く食卓にと大根にはネットをかけ害虫から守るが、どこからともなく虫は侵入し、美味しそうにムシャムシャ食する。無農薬栽培の葉をこれだけ大量に食すれば、この虫はきっと健康な虫生を送ることができるに違いない。
10月下旬の吉日、悪条件を乗り越え、大根は収穫の日を迎えた。腰をかがめ、力を込めて一気に天に向け引き抜く。肥沃な土の中から真っ白い大根が顔を出す。まだまだ暑さ残るこの時期、完全無農薬(JAS認定農薬も使用せず)で育てた大根は多少肌が悪い。11月中下旬頃からの大根は美肌であるが、夏のにおいが残るこの時期の大根はあばたもえくぼ…というところであろうか。たくさんの大根を栽培し来年2月下旬まで収穫は続く。これからが旬の冬大根を存分お楽しみいただきたい。
早生大根と時同じくして早生白菜の収穫も始まった。蒔く時期により多種の種を使い分け播種を行う。8月14日播種、10月29日初収穫を迎える。立派に結球した白菜の前に立ち、お天道様に手を合わせてから、切れ味は正宗級の収穫ガマを大きな葉の間に滑り込ませ一気に切り取る。ずっしりした重さの白菜を手にした時最高の喜びを感じる。8月14日より早生白菜を頭に逐次播種を行い、中生、晩生は冬の寒さを避けるため下の畑での栽培となる。今年は温暖化の影響もあってかいつまでも暖かい日が続き、少々結球が速く進んでいるようである。3か月かけて育っていく白菜も冬の畑の不織布に守られ、翌年の2月下旬まで出荷が続く。本年の栽培の品種の中にサラダなどの生食にも出来、普通の白菜同様に煮物や漬物にも出来る白菜がある。体は少々小さいが、クセがなく使いやすい白菜である。ぜひ一度お試しください。白菜と言えばお鍋、お鍋を囲んで心まで温かく過ごしていただきたい。
話が前後するが、10月ポカポカ陽気に誘われてどこかの国と同じくモンシロチョウがわが畑の上空を侵犯し卵爆弾を産み付けてゆく。10日もすれば糸ほどの細い青虫の赤ちゃんが生れ、大切な葉を食し日増しに大きく育ち一日中食害を続ける。栽培法が間違っていない時は2割程度の食害で済むが、どこかが間違っていた時などはまさに悲惨な状態となる。栽培法に問題があると気付いた時は素直に反省し、もう一度土壌からすべての管理までを検証する。少し開いてしまった窓は、風通しのためとお許しいただきたい。前理事長が「20?30パーセントは自然に還元し、生態系のためにはすべてを奪い取ろうとしてはいけない」と話していたことを思い出す。頭の中では理解しているつもりではあるが小さな青虫を見つけると踏みつぶすようなことはしないが、そっと手で取り、近くの林にポイ捨て。いつもながら小さな心の持ち主である。
大根、白菜と秋冬野菜の代表となる2種を紹介させていただいたが、畑にはまだ幾種類もの野菜が栽培されている。畑に直播した小松菜は緑のきれいな線を大地に描く。小松菜栽培を仰せつかり、一番作が暑さの頂点となる8月14日に播種、その後2週間おきに5回播種を繰り返し、最後は11月16日に種を落とし、後にビニールをかけトンネルの中で育て2月下旬まで収穫予定している。あくまで予定ではあるが…。
小松菜栽培は、キャベツなどの結球物に比べ、やたらと細かい作業が待っている。中でも株間の草取りは、狭い畝間に屈み根気強く作業を進めなければならない。収穫の際もまた屈み作業、よく育った自慢のポッコリお腹が邪魔をしお腹の奥まで酸素が行き届かない、息苦しい作業である。この小松菜は夏の猛暑から冬の厳寒に耐え得る品種4種類を使い分け春先まで収穫を行う。
他には世間で大人気のブロッコリー、ボチボチ人気のカリフラワーも悪条件の中で無事に育っている。現在、ブロッコリーの収穫も始まり、大きく育ち中央に鎮座したものから順に切り取る。カリフラワーはブロッコリーより生育時間がかかるためもう少しお待ちを。現代人と同じくモンシロチョウもこのブロッコリーが大好きなようで、緑濃く大きく育った葉に産卵、青虫に成長し美味しそうにモグモグ食する。大きく育ったブロッコリーには何の影響もないが、またまた小さな心が太短い指に指令を出し、草むらへポイッと捨てる。
他にも本年初作の大小のカブ、大地に根を指すゴボウ、サラダ水菜、大和真菜、サンチュ、最後に大御所のキャベツがある。カブは初栽培となり12月より大カブの収穫が始まる。煮物から漬物まで料理にご利用いただき冬の香りと味を楽しんでいただきたい。
冬は夏に比べ体の代謝が悪くなる。夏期にはサラサラだった血液も多少ドロつく。冬期こそ野菜をしっかり摂取し、今また猛威をふるっているインフルエンザをも跳ね飛ばす日々を送っていただきたい。農薬、化学肥料の野菜には十二分にご注意を。まやかし物の無農薬野菜にもご注意を。百害あって一利なしである。
他の畑には来春を見据えてのキャベツ、ブロッコリー、そして初夏に収穫する玉ねぎやニンニク、ネギなどが植えられた。協力農家の方々もまた色々な野菜の栽培を同時に進めてゆく。
山の農場は間もなく年内で収穫を終え、ゴボウ以外は休眠に入る。高所ゆえ厳冬はすべての作物が雪の女王の手にかかり、凍りつき凍傷にかかってしまう。あとは寒さの少し和らぐ下の畑で収穫を続ける。害獣の食害を受け続け、ようやく今春フェンスを張り巡らせた山の畑で栽培を再開したゴボウは、3年間栽培していなかったため、土が締まり根の伸びが悪く短い姿となった。3年のブランクは大きく響く。
秋の始まりは都都逸でも歌われるアケビの実の熟れ方から始まる。農場の周りの雑木に絡みついたツルにたわわに実が下がる。うす紫色をした実は、熟するとぱっくりと中央から割れ、中から白い果肉に包まれた真っ黒い種子が現れる。ツルから引きちぎり、厚い皮から出した中の実を一気に種ごと口の中に頬張る。うす甘い味が口の中に広がり、しっかり味わった後は果実を飲み込み、種は細く尖らせた口から機関銃のごとく一気に林の中へ吹き飛ばす。悪ガキがスイカの種を飛ばすように。しかし、年々農場のアケビは私を避け高い所へと逃げ上り、手の届かない所で実を結ぶようになり、私は只々恨めし顔で木を見上げるだけとなった。しかしこの繁茂するアケビも元を正せば、数年前に私が機関銃で蒔いた種である。
落葉が道路を埋め尽くす。周りの山々も色とりどりで山肌を染める。しかし本年の紅葉は、色鮮やかな西陣織ではなく渋い大島紬のような紅葉である。台風や熱帯性低気圧が木々を揺すり、強い風が葉をむしり取った。雑木は揺すられたため、葉が弱り秋深くなっても輝く紅葉とはならない。これも自然の摂理、どうしようもなくただ与えられた紅葉を満喫するのみである。その中でも真っ赤な色に染まる木は山桜、春には美しく花を咲かせ、夏には深緑、そして晩秋に美しい色に染まる。紅葉し地上に散るまでの葉の一生を支えた枝には来春の芽が宿る。人知れず静かに咲く花、悪しき人々の目に映る桜の会、同じ桜でも気の毒な桜である。悪しき人々の心に美しい花を咲かせていただきたい。温暖化による豪雨など日本の気候は年を追うごと激しくなり、尊い人命が奪われるなどのリスクが否応なしに伴う。
海にはプラスチックごみが海洋生物を脅かし、土壌の汚染が人類の生命をも脅かす。農薬や化学肥料、そして遺伝子組み換えにより人類の生命の源である食料までもが毒化してゆく。
一年を通じ完全無農薬、無化学肥料で安心していただける作物を育てることが出来た喜びと、時には牙をむく大自然であるが、感謝の気持ちでいっぱいである。微力ではありますが、一人でも多くの人にこの農法の大切さを、そして手法を伝え、安全で栄養価の高い作物をお届けできますようにと願い、来る年も変わることなく大地に立ち、鍬を振り、土を耕し、種を蒔く。健康な笑顔がいつまでも皆様のもとに宿りますように。

 

「物言えば唇寒し秋の風」(人の短をいふ事なかれ己が長をとく事なかれ)とは真逆の農場より