TOP > 慈光通信 > 慈光通信 第204号

慈光通信 第204号

2016.8.1

患者と共に歩んだ無農薬農業の運動 4

 

前理事長・医師 梁瀬義亮

【この原稿は、1991年1月 日本有機農業研究会発行の「梁瀬義亮特集」に掲載されたものです。】

 

 

健康長寿の食生活

 

そんなことで私は田舎に帰って、医師をしながら度々お出でになる患者さんには、「あなたの食生活をこのようにお変えになったら、私との縁が切れるのではないでしょうか。私のお得意さんになってもらうのはごめんだ」といって一生懸命におすすめした。ことにあまり度々私のところにお出でになるご家族は出向いて行って、いろいろご指導申し上げたのです。そして非常にいい成績を上げたのです。
今までしょっちゅう、扁桃腺炎やら、風邪ひきやら、膀胱炎やらでお出でになったお家が、ハタと来なくなるのです。それを三七例ばかりきちんと統計をとりますと、大体3分の1ぐらいに病気が減りました。これはその当時のデータではなくて、その後もずっと続けたデータですが、そういう結果が出たのです。のみならず、たとえ病気になっても軽く済むのです。
例えば今、私の町ではインフルエンザが猛烈にはやっています。ところが私は毎日、マスクをしたことはないし、毎日患者さんにセキをかけられながら患者さんの口の中をのぞいておりますが、ちっともかからないのです。あまり自慢するとあしたかかるかもしれないのですが……。(会場笑い声)「タフだ」といってほめて下さるのですが、実は私はタフではなくて、病弱なのです。ですから「本当はみんながこれ位できるはずだ」と信じておるのです。
インフルエンザで39度の熱を出して、大男が悲鳴を上げてのたうちまわっているのは、大概そういう方は生活が悪いのです。たくさん肉を食べて、血液が酸性化して、見たところ頑丈そうだけれども病気になり易いか、なったら重いのです。
私はここで「決して肉を食べてはいけない」「絶対に動物性はいけないのだ」というのではないのです。これらを少なめにして「大豆タンパクを主たるタンパク源にし、野菜と海草をよく召し上がれ」と申すのです。今はこれがすっかり忘れられているということを、もう一ぺん思い起こして頂きたいのです。こんなわけで私は皆さまに「野菜をおあがりなさい」とおすすめしたいのです。

以下、次号に続く

 

夏の野菜あれこれ

夏になって暑くなると、「だるい、疲れやすい、食欲がない・・・」と感じられる方も多いと思います。これがいわゆる夏バテの症状です。これは、体内の水分やミネラルの不足、強い疲労や睡眠不足、暑さと冷房による冷えの繰り返し、炎天下に長時間いたり、暑い室内での仕事や運動などで激しく体力を消耗することにより、湿気や気温の急激な変化に体のリズムがついていけずに、自律神経の働きが鈍くなることからおこります。
汗をかくと、体内のビタミンB1は減ってしまいます。人間は、糖質や脂肪を燃やしてエネルギーを作りますが、この燃焼に必要なのが、ビタミンB群です。ところが暑いと食欲が落ちて、そうめんや果物などの糖質ばかりを摂りがちなため、ビタミンB群が不足し、エネルギーが作りづらくなります。エネルギーがいつもより多く必要なのに、まかなえないためバテてしまうのです。また暑いと身体のストレスがたまり、ストレスがたまるとビタミンCが消費され、不足しがちになります。ですから夏バテ防止にはビタミンCを含む食品を普段より多めに取らなければなりません。
代表的な夏野菜はトマト、キュウリ、ナス、ゴーヤ、トウモロコシ、カボチャなどが挙げられます。濃いはっきりとした色の野菜がその特徴といえます。食欲も落ちるこの季節、カラフルなビタミンカラーは食欲を刺激し、含まれている栄養素とその効能は、夏にぴったりです。
夏野菜には、水分やカリウムを豊富に含んでいるものが多く、身体にこもった熱を身体の中からクールダウンしてくれます。トマトやキュウリなど生で食べられるものも多いので、夏に不足しがちな栄養素を簡単に補給できるのが夏野菜の長所です。逆に、冬には身体を温めてくれる成分を多く含む野菜が豊富です。気候や季節により身体に必要な栄養素があります。旬のものを旬の時期に食べることで、旬の野菜がその時身体に必要な栄養素を教えてくれるのです。しかも、旬の野菜は、安くて格別おいしいのです。最近は季節を問わず、いろんな野菜が手に入りますが、季節外れの野菜は、旬のものと比べ、味が落ちるだけでなく、栄養価も低くなります。それは、科学的に各種条件を整え無理やり育成していることと、本来の育成条件できちんと作られた野菜との差です。夏野菜は、夏に食べることにより、本来の栄養素とうまみを味わうことができるのです。
そこで、「食生活を少し工夫することにより夏バテは防げる」ということで、夏バテに効果的な野菜を紹介させていただきます。

 

 

◇ スイカ

夏を象徴する果物と言えばスイカ。体内の毒素を排出し、高い抗酸化作用をもつ栄養成分シトルリンやリコピンを含んでいます。疲れやすい夏に、おすすめのフルーツです。
スイカには、免疫力を高めるβ-カロテン、疲労回復に役立つビタミンB群などが含まれています。
暑くて喉が渇いている時に、いくら水を飲んでも喉の渇きがおさまらないのに、スイカを食べると体にスッと水分がしみわたる、と感じられたことはありませんか。スイカに含まれる糖分は、果糖とブドウ糖でエネルギーに素早く変わるため、夏バテで疲れた身体へのエネルギー補給にはぴったりなのです。
利尿作用は、果肉より皮が強いと言われていますが、シトルリンは白い皮にも含まれています。外の硬い薄皮を除いた白い皮の部分をお漬け物にしたり、薄切りにして炒めたり、煮てもおいしく食べることができます。

 

 

◇ キュウリ

キュウリには、夏に汗をかいて不足しがちな水分とカリウムが多く含まれています。また、ビタミンA・B群・Cや、カルシウム・カリウム・鉄などのミネラル、食物繊維をバランス良く含んでいます。
他にも、身体にこもった熱を取り除く作用や、アルコール代謝を促す働きがあり、夏バテ予防・二日酔いに摂りたい食材の一つです。
キュウリにはビタミンCを壊してしまう酵素が含まれるといわれていますが、酢にその酵素の働きを抑える作用があるので、酢の物やサラダをドレッシングで食べれば効率よくビタミンCも取れます。
冷麺やそうめんのトッピングにキュウリもたっぷりのせていただきたいですね。

 

 

◇ トマト

トマトの赤い色に含まれるリコピンという色素には、抗酸化作用があり、老化防止やガン予防にも効果があるといわれます。
ビタミンEと一緒に取ることでより強力な抗酸化作用が期待できるので、ビタミンEが豊富なオリーブオイルを使って調理するのがおすすめです。
豊富にトマトが手に入るこの時期におすすめなのが、「セミドライトマト」です。
ミニトマトなら横半分、普通のトマトなら1?幅くらいにカットし、しばらく塩を振りかけておきます。切り口の水分をクッキングシートなどで軽く拭いてからオーブンで150℃で1?2時間、表面が乾燥し、少し柔らかみが残る程度で完成。
冷めてから冷凍、または容器に入れ替えてオリーブオイルをトマトが隠れる位に入れて保存。ガーリックトーストにオニオンスライスやツナ缶と共にのせて、又はパスタに・・・。セミドライトマトは、そのまま食べても美味しく、また料理に加えれば、滋味豊かで、奥行きのある味わいに仕上げることが出来ます。甘味が強く濃厚で、生のトマトとはちょっと違った格別のおいしさです。

 

 

◇ ピーマン

ピーマンには、強い紫外線を受けやすいこの時期にはありがたい、皮膚の結合組織を作るコラーゲンの合成を助けたり、メラニン色素の沈着を防ぎ、健やかな肌を保つためのビタミンCが豊富です。ビタミンCは調理によって壊れやすいのが難点ですが、ピーマンは組織が強いため、壊れにくいのが特徴です。
他にもピーマンには、皮膚や粘膜を健やかに保ち、ウィルスから身体を守り夏風邪にも効果的なビタミンAも含まれています。ビタミンAは油と一緒にとることで吸収率が高まる栄養素なので、油で炒めて食べるのがピッタリです。

 

 

◇ ゴーヤ

ゴーヤに含まれるビタミンCはキャベツの2倍で、加熱してもほとんど壊れないのが特徴です。他にもビタミン、ミネラルをバランスよく含みます。夏場に汗とともに失われ易いカリウムも多く、むくみを解消し滞った代謝を促進します。特有の苦み成分は、食欲を刺激して夏バテ予防に働きかけます。
ゴーヤの苦味が気になるという人は、白い綿の部分をしっかり取ったり塩もみすることで、気にならなくなります。ゴーヤチャンプルーのように、お肉の脂やタンパク質と一緒に調理すると苦味もやわらぎお勧めです。
種を取り除いて薄くスライスし、片栗粉や小麦粉を付けて揚げ、ゴーヤチップにするとサクサクッといくらでもいただけます。
◇ ナス
ナスに含まれている成分は、約94%が水分ですが、ビタミンB群・Cなどのビタミン、カルシウム・鉄分・カリウムなどのミネラル成分、食物繊維などをバランス良く含んでいます。ナスは、これらの栄養成分により生体調節機能が優れていると言われ、特に豊富に含まれる食物繊維は、便秘を改善し大腸がんの予防、血糖値の上昇を抑え糖尿病や肥満を防ぐ効果があります。
またナスには、皮に紫黒色の色素「アントシアニン」、一般にナスのアクと呼ばれるクロロゲン酸などの抗酸化成分「ポリフェノール」が含まれています。これらの成分は、体の老化防止、動脈硬化の予防、がんの発生・進行を抑制するなどの作用があります。

 

 

◇ カボチャ

かぼちゃは緑黄色野菜に分類され、ビタミンE、β‐カロチンが豊富に含まれることは有名です。ビタミンEは「老化防止のビタミン」、「若返りのビタミン」と呼ばれ、しみやしわをできにくくする働きがあります。この他にも、のぼせ、肩こり、腰痛な どの更年期の諸症状を和らげたり、血行不良による冷えを解消する作用もあります。さらにかぼちゃには、便秘を改善し大腸がん・糖尿病の予防効果がある食物繊維、体内に蓄積されたナトリウム(塩分)を排泄し、高血圧を防ぐ働きがあるカリウム、またビタミンB群・Cもバランス良く含んでいます。
カボチャは煮物やサラダはもちろん、他の夏野菜と合わせてグラタンにも出来ます。素揚げしたカボチャ、生のピーマン、トマト、玉ねぎのスライスをグラタン皿に入れ、塩、こしょうをして1かけのバターを入れてから上にとろけるチーズをのせます。オーブンやオーブントースターで焦げ目がつくまで焼きます。簡単ですが砂糖を使っていないので、カボチャ本来のおいしさが引き立ちます。

 

 

◇ オクラ

オクラの独特のぬめりは、ガラクタンやペクチンなど食物繊維によるもので、これがうまみとなり食欲をそそります。また、整腸作用やコレステロール低下作用があります。また、オクラにはビタミンCやB1、鉄分も含むので、夏の体力増強に有効です。
生のオクラ5本を細かく刻み、大さじ2杯の水を入れて粘りが出て塊になるまでよくかき混ぜます。
これを好きなだけ、好きな料理に加えて食べます。このネバネバが糖質を包み込んでくれるので糖質の吸収を抑えダイエット効果があるといわれています。

 

 

◇ シソ

シソ特有の香りの元は、ペリルアルデヒドという成分で、臭覚神経を刺激して胃液の分泌を促し、食欲を増進させるほか、健胃作用もあるといわれています。さらに強い防腐作用 を持ち、食中毒の予防にも役立ちます。
青シソを洗い、水分をペーパータオルなどでふき取ってから揃えて容器に入れ、かぶる位の醤油を入れます。
冷蔵庫で保存して、おにぎりに巻いたり冷や奴の薬味にしたりしても美味しくいただけます。お好みでニンニクやごま油を入れて漬け込んでも。

 

 

◇ モロヘイヤ

モロヘイヤの栄養価が非常に高いことはよく知られています。特にモロヘイヤに含まれているカロチンは、ホウレンソウの4.6倍、ブロッコリーの19倍も含まれており、さらにカルシウムはホレンソウの9倍、ブロッコリーの10倍も含んでいます。
これらの豊富な栄養素によるモロヘイヤの健康効果には、免疫の活性化、がんや老化の予防、骨粗鬆症の予防、胃粘膜の保護、疲労回復、高血圧予防、精力増強作用、肌や皮膚を 若々しく保つ美容作用、貧血の予防など様々な効能が挙げられます。さらに、モロヘイヤのヌルヌルとしたねばりには、水溶性の食物繊維が豊富に含まれています。高い栄養価と健康効果を持つモロヘイヤは、まさに注目度ナンバーワンの野菜です。

 

 

これらの夏野菜を使っておすすめの夏のレシピは、夏野菜の揚げ浸しです。
ナス、ピーマン、パプリカ、カボチャは食べやすい大きさに切って素揚げし、ミニトマトは湯むき、オクラは茹でます。かつおをよく効かせたすまし汁より濃いめのお出汁を作って冷まし、そこに油を切った野菜と薬味に生姜を入れ、冷蔵庫で冷やしていただきます。夏野菜の赤や緑の彩りがとてもきれいな一品です。
夏野菜にはまだまだいろいろな種類があります。冬野菜に比べ、生で食べる事の出来るものも多いのですが、ひと手間加えることで栄養価も違ってきます。暑い夏はまだまだ続きます。いつでもに手入る栄養豊かな野菜を使って夏を乗り切りたいものです。

 

農場便り 8月

 

8月早朝、薄い靄が真夏の青空を覆う。夏季の作業はきゅうりとナスの収穫から始まる。早朝とは言え、気温、湿度共に高く、作業開始まもなく額には汗が流れる。時折吹く風が、汗の伝う頬を撫でてゆく。
きゅうり畑では、今年生まれた小豆粒ほどの子ガエルが何百と足元で動く。その子ガエルを踏まないよう気を付けて足を運ぶ。通路は常にぬかるみ、水が多い時などは泥に足を取られ、前に踏み出した足先に長靴の姿はなく、後方に長靴だけが直立状態で残る。出した足はそのまま泥の中へと沈んでゆく。大きく成長したきゅうりに囲まれ水分が豊富、子ガエルがトンビやカラスの外敵から身を守るのには絶好の場所となる。ただ、朝夕ゴリラが収穫カゴを持ってウロウロすることだけが難点である。
大きく青々と育ち、2m以上の緑の壁になったきゅうりを紹介させていただく。
きゅうりの原産国はインド北西部ヒマラヤ山麓で、西アジア、メソポタミアでは紀元前4千年より栽培されていた。中国にはシルクロードを経て紀元前122年頃から栽培されている。日本では、平安時代に栽培されていたといわれる。当会では、前身の「健康を守る会」から今まで、きゅうり栽培は長きに亘る。
きゅうりはウリ科キュウリ属。全体の90%は水分からなり、過去に於いてはほとんど栄養のない植物とされていたが、近年ビタミンA・B群・C、それにK葉素、食物繊維、ミネラルが含まれ、2010年には脂肪分解酵素ホスホリパーゼが確認された。現在のきゅうりにはほとんどお目にかからないが、上部の苦み部にはガン予防効果のあるククルビタシンが含まれている。また、ククルビタシンは胃腸の調子を整え便秘に効果がある。他に含まれるピラシンは、血液をサラサラにし、心筋梗塞や脳梗塞から身を守る。余分なナトリウムを体外に出す働きもあり、むくみを取り美肌効果もあるとされる。きゅうりを日本の伝統食であるぬか漬けにするとビタミンB1は7倍にも増える。まさに先人の知恵である。
きゅうりは大飯食らいの大水飲み。肥料と水分を切らすとその影響は顕著に表れる。特に水管理には神経を尖らせる。そのため水管理の行き届く畑での栽培に限定される。
4月7日、春とは言え、まだ朝夕は冷え込む。128穴のトレイに一粒ずつ種を落としてゆく。発芽後、葉と葉が喧嘩しないよう種の方向は一定にする。その後1週間位で土を持ち上げ発芽が始まり、これから本格的な育苗が始まる。この時期、まだ気温が低いため2、3日に一度の潅水となる。ビニールトンネルの中での育苗で、そのうちに双葉の陰から本葉がのぞいてくる。本葉が2枚位の時、1本1本ポットに移植する。無農薬栽培の場合、病気や害虫による「とび苗」が出るため最初からポットには播種を行わず、苗が安定してから一手間はかかるがポットへと上げていく。小さいトレイから大きなポットに植え替えられた苗は一気に根を張り巡らす。播種と同時期に栽培を行う圃場の準備を始める。まず、生命線である堆肥を大量に入れ、苦土石灰でpHを整え、根が伸びやすいようにと細かく耕す。そして1.8mの畝を立て、畝の肩に黒マルチを張って栽培地は完成。後は苗の生育と気温の上昇を待つ。大きく苗が育つといよいよ定植。自作のパイプのヤリでマルチに地表から深さ10cmの穴を開ける。この時の微妙な力の入れ加減は後の定植作業に影響する。株間は約60?、1本1本ポットから畑へ植え替えていく。真っ白い根はポットの土をがっちりつかんでいる。定植後に水を与えて作業終了となる。本来ならば定植前に栽培ネットを張っておきたいところだが、「明日、また明日」と頭の中で悪い虫がささやき、ついに定植が先となってしまった。苗の活着を確認しネットを張る。苗に引っ掛けないよう細心の注意を払い、まずポールを2m間隔で立ててゆく。各畝の隅には鉄の杭が地中深く打ち込まれている。ポールの上部に極太のビニール線を張り、そこへきゅうり栽培ネットを張りながらポール1本1本に括りつけ、ビニール線は鉄杭に強く結びつけられる。しばらくして苗が活着し、芽を大空へと伸ばしてゆく。葉の付け根付近から出る細いひげがネットに力強く巻きつくようになると、きゅうりは1日で30?位成長する。
人の子がそうであるように、あまりの放任はまず良い結果を残さない。きゅうりも、1本1本が思い思いの所へ伸びて行くととんでもないことが起こる。きゅうりのツルは、弱い子は強い子に押しのけられて行き場を失う。そこで、育ての親の私がそれぞれその子に合った方向(すべてが真上方向ではあるが)に導き、きゅうり専用のホッチキスで止めていく。それと同時に脇芽をかき取り、悪い葉も取り除く。生命力旺盛なきゅうりのツルは見る見るうちに最上部まで駆け上がり、2mを超えるきゅうりの壁が畑に出来る。最下部より5節までの子ヅルはかき取り、下部から収穫が始まる。きゅうりが黄色い花を咲かせ、ハチや花アブが忙しなく飛び回る。繁茂する葉をかき分け、朝夕2回収穫を行う。きゅうりは水と肥料が大切で、水分は週に2回、畑の前を流れる美しい用水を畝間に流し入れる。追肥は2週間に1度の間隔で油粕か米ぬかを与える。8月10日現在、4月に播種を行ったきゅうりはほぼ収穫を終え、意気盛んだった生命力も日増しに衰え、まもなく終焉を迎える。5月中旬、そして6月初旬に播種を行ったきゅうりは今や盛りと繁茂したツルにたわわに実を付ける。しかし、近年大発生するカメムシの襲来で幼い実の時に養分を吸い取られたために奇形果が多く出、廃棄するきゅうりもたくさんあるのが現実である。近代社会が環境を変化させてしまったツケなのであろう。
暑い暑い夏も半分が過ぎた。これからきゅうりの収穫量はガクンと落ちるが、もう少しの間本年の夏の味を楽しんでいただき、元気に夏を過ごしていただきたい。
8月盛夏、農場の圃場では、すでに秋冬用の野菜苗が育苗されている。まだセミが目覚めていない早朝より収穫カゴを片手にきゅうり畑に入る。朝つゆに葉はしっとりとぬれ美しく光る。きゅうりの実を1本ずつカゴに入れてゆく。セミが目覚める頃、流れる汗が額を伝う。そしてセミの大合唱が始まる頃には汗だくとなり朝の収穫を終える。冷えたお茶を一気に飲み干し、一息ついてから次の作業へと向かう。真夏の三大作業の草刈り、草取り、草削り。地球の地表を守ろうとする夏草との競争の季節でもある。
1日の作業が終わる。太陽は西の山に姿を消す。畝間を飛び跳ねていた子ガエルの姿も少なくなった。夕方より寂しげな羽音を立てていたヒグラシの声も消え、暗闇が畑を包み込もうとしている。毎日、嵐のように降る夕立、大粒の雨が地面をたたく。元来、夕立が来ると涼しくなるといわれるが、近頃はかえって湿度が上がり、過ごしにくい夜となる。
あと幾日かでお盆を迎える。お盆には夜空に咲く大輪の花に、亡くなった人への思いを馳せる。川面には何百もの灯篭がゆっくり流れに任せ、ローソクの光が水面を照らす。大勢の人々はその幻想的な光景に心を打たれる。最後の大花が漆黒の空を染めた時、一瞬ではあるが多くの人の心は清められる。
残り少ない夏、虫たちは夏を謳歌し、耕人は汗をし、次の作物へ思いを馳せる。

 

 

子ガエルと話をする耕人より