TOP > 慈光通信 > 慈光通信 第208号

慈光通信 第208号

2017.4.1

患者と共に歩んだ無農薬農業の運動 8

 

前理事長・医師 梁瀬義亮

【この原稿は、1991年1月 日本有機農業研究会発行の「梁瀬義亮特集」に掲載されたものです。】

 

 

農薬中毒の諸症状

 

それでは、有機農法とは一体どんなものかについてお話しする前に、ちょっと一言だけ農薬中毒の症状をご参考に申し上げます。
まず第一に、うなじがこって仕方がない。これが特徴です。それから、あれもしなければいけない、これもしなければいけないとクルクル頭が回るのだけれども一つも実行できなくなります。それから気がイライラしてきたり、やたらにもの悲しくなり、また感情が抑圧出来なくなります。何をやっても面白くなくなって、いわゆる労働意欲、生活意欲がだんだんなくなって自殺したくなります。
あのホリドールをたくさん使っていた時分に、いたいけな小学生、中学生が、よく農村で自殺しました。また大自然の中で肉体労働をしている農民が不思議と厭世自殺をする例が非常に多かったのです。
それから、平衡神経がやられて、ヒョッと立つと目がくらむのです。また、口のまわりに(これが特徴的ですが)わけのわからないニキビのような紫がかった吹出物がよく出てきます。口のまわり、額、ほっぺたに褐色のシミが多くなります。これは農薬が、副腎皮質という人間の内分泌に大事な箇所にゆく交感神経を選択的に侵すからです。そのため副腎の作用が悪くなり、こういうわけの分からない色素沈着が起こり、全体として顔の色がススをはいたように黒くなっていきます。しばしば口の中に口内炎や舌炎を起こしたり、唇の皮がやたら?けたりします。それから、胸のへんで何だか詰まったような感じがして、時々ため息をつかなければならなくなります。それからミゾオチが重くなり、別に不養生をしたわけでないのに胃のところが気持ちが悪い。調べていただくと軽い胃炎があるくらいだとかいわれる。
それからまたひどい便秘になったり、あるいはわけの分からない下痢、または便意ばかりもよおして、少し緊張するとすぐお便所へ走らなければならないようなこともしばしばあります。もう一つよくあることは、夜中にふと気がつくと、手がしびれていることです。それから貧血が出てきます。
このような症状が、いろいろな組み合わせで出てきます。それでお医者さんに行くと「ノイローゼだ」とか、「軽い胃炎だから大したことはない」とか、あるいは「内分泌の軽い障害だ」とか軽くいわれるのです。
2年も3年もそういうふうにお医者さんから大したことはないといわれながら、本人にとっては非常に重病感があり苦しんで私のところへこられます。そこで慢性農薬中毒を指摘してさし上げ、注意すると、大体1ヶ月たつとウソのようによくなっていきます。
そこでみなさまに、とりあえず農薬をあまり使わない作物と、使う作物をお教えしますと、特によく使う野菜は、いわゆる高級野菜といわれるキャベツ、白菜、レタス、セロリ、それからいろいろな季節はずれのもの、温室ものです。それに対してあまり農薬を用いないものは、水菜とか、ま菜とか、ほうれん草、ごぼうといった、比較的高級野菜といわれないものです。モヤシも最近は大丈夫ですが、以前はよくモヤシを漂白していました。最近は黄色いモヤシが出るようになりましたが、なるべく色のついたものがいいと思いますし、海藻類もいいわけで、海藻類はなるべく加工品でないものをおすすめしています。
それから、くだもの類は、一般に非常によく農薬を使います。みなさまにおすすめしたいことは、くだものはいいと思って、たくさんお召し上がりにならないことです。皮は厚くおむきになった方が安全です。くだものは色々と問題があります。ほかに季節はずれのものはなるべくさける|こんなことを知っていただきたいと思います。
有機農法とは
ちょっと横道にそれましたが、それではいったい有機農法とは何か。「有機農法は自然農法なり」とよくいわれます。自然農法とは何か。これを申しあげてみなさまに農業の知識を持っていただきたいのですが、なぜかというと、よき消費者になっていただきたいからです。いくら一生懸命に心ある農民が作らせていただいても、みなさまが買って下さらなければ、農家は成り立っていかないのです。
有機農業の定義ですが、これは本当にいろいろなことをいう方があって、はっきり分かったような分からないような言葉なのですが、ここではっきり申しますと、有機農業というのは「自然が私たちに教えてくれる農法」ということです。「自然の法則に従った農法」ということです。それに対して近代農法は、いまから120年ほど前にドイツの化学者リービッヒ博士が、植物を引き抜いて枯らして、酸やアルカリや熱を加えて分析して窒素、燐、カリを見つけて、その分析データから逆に、この三要素の化合物を与えれば植物は出来ると考えた。リービッヒ博士の一派の教える農法です。
そういう差があります。自然が教える農法に従うか、リービッヒ博士一派の農法に従うか。もちろんこれは自由ですが、現在日本はもっぱらその近代農法に従って、その結果は先程申しあげたように、欠乏食と毒食を国民が食べなければならない結果になったわけです。
今から7、80年前は「世界最強の民族」といって讃えられたわが日本民族が1968年のメキシコオリンピックのあとの世界の記念事業である国際体力テストの時に「世界最低」であったという悲しいデータを見なければならない結果になるのです。
 

以下、次号に続く

 

洗浄剤の使い分け
掃除や洗濯で使う洗浄剤には色々な種類のものがあります。慈光通信でも過去に色々な使い方を紹介してきました。今回、「それぞれの使い方はわかるけれど、どう使い分けたらいいの?」という会員さんの声をいただきましたので、ご紹介させていただきます。

 

今回紹介するのは次の4つです。
1.クエン酸
2.重曹
3.酸素系漂白剤
4.石けんクレンザー
簡単な使い分け方は前ページの表に記載しましたので、そちらをご覧ください。

 

1.クエン酸
油汚れよりも水回りの掃除が得意

水アカや石けんカスなどの汚れを落とすことができます。
シンクやお風呂の水アカ、電気ポット、トイレの黄ばみ、加湿空気洗浄機のフィルターやトレーのお手入れにお使い下さい。
クエン酸水を作っておくと便利です。スプレータイプのボトルに、水200mlに対して小さじ1杯のクエン酸を入れます。作り置きできますが、一か月を目安に使い切りましょう。
基本的な使い方は、汚れている場所に直接吹きかけてふき取り、その後よく水洗いをします。
電気ポットを洗浄する場合は、水1Lあたり20gのクエン酸を入れ、沸騰させたあと一時間程放置して中身を捨てます。クエン酸のにおいを取るため、ポット内を洗い、もう一度水だけで沸騰させて下さい。ピカピカになります。
また、困るのは浴室や洗面台の鏡の曇り。簡単な曇りはクエン酸水をスプレーし、ふき取ると綺麗になりますが、頑固な曇りの場合は、濃いめに作ったクエン酸水を鏡にスプレーし、その上からキッチンペーパーを貼りつけて、再度スプレーを吹きつけ、一時間ほど放置し、柔らかい布で水ぶきした後、空ぶきします。
※ 注意
塩素系のものと一緒に使うと有毒ガスが出て危険です。

 

2.重曹
アルカリ性。油汚れに強い。
毎日の油汚れ、におい取りに

洗浄、研磨、消臭の三つの効果があります。
靴箱・冷蔵庫・トイレなど、においの気になる場所に、小さいお皿や瓶に粉のまま入れ、置いておくと消臭効果が期待できます。
お湯1Lに重曹大さじ4杯を入れ、よく溶かすと重曹水が出来ます。キッチンやレンジの汚れにスプレーして軽く磨き、30分程放置してから乾いたタオルで拭き取ります。
鍋のコゲ取りには重曹ペーストを使いましょう。水と重曹を1対3の割合で入れて練ります。これをコゲついた部分に塗り、スポンジでこすり洗いします。五徳の洗浄には鍋に水を張り、重曹を加えてしばらく煮た後、取り出して重曹ペーストを塗り、スポンジでこすり洗いします。
*使えないもの
アルミ製・銅製・漆器・大理石・傷がつきやすいもの

 

3.酸素系漂白剤
アルカリ性。色つきの衣服にも使えます。
毎日のお洗濯や洗濯機の洗浄に。

水に溶けると酸素が発砲し、漂白されます。漂白、消臭、除菌の3つの効果があります。
塩素系漂白剤とは違い、色もの、柄物にも使って頂けます。
シミができた服は、30度から50度のお湯2Lに10g程の酸素系漂白剤を溶かし、30分程つけ置きした後、水ですすぎます。
台所ふきんの汚れもよく落ちるので、毎日の家事の仕上げにお使い下さい。
洗濯槽のクリーニングには50度位のお湯60Lに500g?1?の酸素系漂白剤を入れ、「洗い」コースにした状態で5分程回します。これを2時間の間に3回ほど行います。その間、出てくる汚れはこまめに取り除きましょう。その後半日程放置し、もう一度「洗い」コースを5分。最後に「洗い」から「すすぎ」までの一通りの工程を行います。(詳細は慈光通信197号をご覧ください。)
*使えないもの
毛、絹の入ったもの・水洗い不可のもの色落ちしやすいもの・ステンレス以外の金属・ボタン・漆器

 

4.石けんクレンザー
アルカリ性。石けんの洗浄効果と研磨効果で、頑固な汚れを落とします。

 

クレンザーをスポンジにつけ、泡立てて使います。頑固な汚れには、直接汚れに塗り、スポンジでやさしくこすります。強くこすると傷がつくので、ゴシゴシとこすらないようにしましょう。仕上げは水で洗い流すか、ぬれ布巾できれいにふき取ります。
シンクの汚れや鍋のコゲ落とし、換気扇フィルターの汚れに効果的です。
また、マグカップの茶しぶやスプーンやフォークのくもりもよく取れます。
*使えないもの
漆器・貴金属・人工大理石・皮製品・塗装したもの・水洗いができないもの

 

洗浄剤は、それぞれに合ったものを使用することで、より効果を発揮します。
お手入れする場所の材質や汚れ具合によって上手に使い分けましょう。

 

農場便り 4月

冬枯れの木々に囲まれた農場にもゆっくりと春がやって来た。固く閉じられた雑木の芽は日に日にふくらむ。果樹園のスモモの枝先の白いつぼみが今にも咲きそうであるが、朝夕の冷え込みに邪魔され、開花のタイミングを計る。畑の隅の土手にはふきのとう、ふぐりの花も一斉に咲き始める。きれいに整地された畑では、冬を無事に越した小さなキャベツ苗や晩秋に播種をした夏ゴボウの葉が早春の陽を浴びて緑濃く成長してゆく。
山の主、イノシシは山中の食物を食い尽くす。毎年、春先にはいたる所の土を掘り起こし、わらびの根に食らいつき、土も何もかもお構いなしにすべてを胃の中へ放り込む。美味しいわらび餅にすることなく、根をそのまま食べてしまうイノシシの食欲には脱帽である。
農作業は、冬を越したキャベツ畑の除草から始まる。土中ではすでに春夏草の雑草が芽を切り、浅い土の中でモヤシ姿で待機している。三角型で二辺が刃になった除草ぐわで土の表面を軽く削る作業が春一番の土を触る作業となる。もちろん他の作業も多くあるが、泥にまみれる耕人らしい作業はこの除草が作業始めとなる。ひたすら土を削り、目に映らない草を心眼で削ってゆく。この地味な作業は後々キャベツの成長と共にその成果が表れる。
4月中旬にもなると気温は日増しに上昇し、雑草の芽は一斉に地上に姿を現す。雑草の成長のスピードは作物の成長と比べると、新幹線とローカル和歌山線を走る電車ほどの差があり、小さな芽は見る見るうちにキャベツ畑を緑の大地へと変えてしまう。今まで数え切れないキャベツの作付けを経験している私は、早春が勝負であることを重々承知してはいるが、一斉に始まる農作業に手が回らずとんでもない結果になってしまったこともある。本年はまだ成長が見られない3月中旬、除草機で畝間を中耕し、下旬には除草ぐわでの除草を開始する。ただただ地表を除草ぐわで削ってゆく単純な作業、頭の中で色々な事を思い浮かべるも、すぐにネタ切れ。後は根気との戦いとなり、一畝50mを少し進んでは振り返りため息、これを一日中繰り返す。2日かけて単純な除草作業は5畝を完成させ、ニンマリ口元が緩む。一つの作業を終えるたび、帰宅と同時に作業終了をまるで天下を取ったかのごとく付けられるだけの尾ひれをつけ、家族に話して聞かせる。黙ってはいられないのが私の性格、家族の「また始まった・・」と口には出さずとも目を見れば分かる。人一倍ある体重の私を軽くあしらう。私の頭に哲学者の言葉が思い浮かぶ。
「良妻なら幸せになれる。悪妻なら私のような哲学者になれる」と世界三大悪妻を持つソクラテスの言葉である。さて、私はどちらであろうか?おそらく前者であることを信じる。ちなみにあとの二人とは天才作曲家であるモーツアルトとロシアの大作家トルストイの妻である。
農場に話を戻す。4月に入ると除草を終えたキャベツ苗に追肥を行う。株間に油粕を一握り与える。多く与え過ぎると病虫害の発生を招き、少な過ぎると後の成長に差し支える。「腹八分目に医者いらず」方式でキャベツの顔をうかがいながら2?3回に分け追肥を行う。5月も中旬に入ると日中の気温もかなり上がり、どこにこれだけの種があったのかと思うほど後から後から夏草が芽を切る。
蒸し暑くなり、大きな葉に成長したキャベツの間をもう一度除草して収穫を待つ。冷涼な気候を好むキャベツの品種も幾年にも亘り暑さにも耐えうるよう改良されてきたが、中には細菌に侵される株もある。そのため一般栽培ではかなりの頻度で殺菌・殺虫剤を散布するのでくれぐれもご注意いただきたい。
うちわ状の大きな葉がお日さまの光を浴びて育つ。モンシロチョウも元気よく畑の上を飛び回り、葉の裏に卵を産みつけるが、この時期、キャベツの生命力が青虫を上回る。健康に育ったキャベツは6月から7月中下旬まで収穫され、初夏の食卓に瑞々しいキャベツが届けられる。
山の畑でうぐいすの鳴き声が響く中、美しい声を打ち消すようにトラクターがうなり声を上げ、トラクターのロータリーで容赦なくハコベやフグリをたたき切り、土を起こす。
晩秋11月から収穫を行うゴボウの地作りが始まる。近くには、夏ゴボウが力強く大地の深くに根を伸ばしてゆく。その周りには、害獣除けネットが張り巡らされているが、憎き鹿はネットを飛び越え若い芽を食害する。困ったものである。しかし、ゴボウは計り知れない生命力を持ち、少々の食害には負けることはない。
トラクターは土を細かく耕してゆく。根にストレスを与えるとマタになったり成長が止まることがある。固まった土や肥料のかたまりもストレスを導く。厳冬に荒起こしをし、播種一か月前には完成した培地に仕上げる。細かく耕した大地に浅い溝を切り、畝を立てる。その際、山をブルドーザーで開墾したこの畑は40年経った今も多くの石が顔を出す。邪魔になる石を取り除きながら畝の上をならし、名機「種まきごんべい」の登場。細長いゴボウの種を地上に落とし、土をかけてゆく。が、何しろガレ土ゆえ、所々不規則に種が落ち10日後にはとんでもないところから芽を出すことがある。ロスになる種を見越して少し多目に播種をし、発芽後の間引きで調整する。播種後、ごんべいの足跡が一本の筋となって地上絵を描く。ナスカとまではいかないが、地上に出来た筋に苦土石灰をうすく撒く。
何しろ酸性の強い粘土質の開墾地、ゴボウは酸性を嫌うため、発芽すぐの赤ちゃんゴボウを守るための技である。それならば全体に石灰をと思うが、少々の石灰の投入ではPH調整は難しく、長年の経験からこの方法に至る。周りをネットで囲い水分の好きなゴボウは発芽まで乾燥させないよう注意する。後の追肥は行う事なく管理は除草のみ。11月まで長い時間をかけ育て、一年で最も目出度い正月の膳を飾る。
先に紹介させていただいたキャベツ、そしてこのゴボウ以外にも夏野菜の苗が多種にわたり今ビニールトンネルの中で育苗されている。玉ねぎやニンニクも育つ。栄養価の高い夏キャベツや夏ゴボウをお召し上がりいただき、幸せな味と香りに包まれて、人間にとって最大の幸福である健康を感じていただきたい。
時は進み間もなく春真っ只中、春陽を求め人は東へ西へ。春がすみと相成り、年に一度の桜の花の晴れ姿は人々の目に焼き付き魅了する。数年前、岐阜の山奥の根尾の地に住む友人から2本の桜の苗木が届いた。根尾の里には日本三大桜で国の天然記念物に指定される薄墨桜が1500年の時を越え、今なお人々の心に感動を与え続けている。薄墨桜は、つぼみの時にはピンク、満開になると白色、散り際には特異の淡い墨色になる桜である。その桜の種を、近くに住む老人たちが拾い集め育てた実生苗を「この大和の地に薄墨桜を咲かせよ」と送ってくれた。一本は農場にある慈光会創始者 梁瀬義亮の記念碑の横に、あと一本は我が家の庭ではあまりに芸がないので、「五條で一番この桜が似合う場所は」と頭を悩ませた結果、町並み保存を行う五條新町にある我が家の菩提寺のそばに定植することにした。1500年じっと世の中を見てきたこの桜の親木を想い、これから1500年この五條の地を見つめ、年に一度、美しく変化する桜を人々の心に咲かせていただきたい。私のささやかなロマンである。平和な日々を送れるようにと願う。

 

頭の中はいつも春がすみの耕人より