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慈光通信 第165号

2010.2.1

食物と健康と農法 4

 

前理事長・医師 梁瀬義亮

【この原稿は、昭和53年(1978年)4月15日 くらしの研究会主催 寝屋川市で行われた梁瀬義亮前理事長の講演録です。】

 

 

健康長寿村と不健康短命村

 

 

どんな生活をしたら病気が出るか、出ないかということを私は昭和二十三年から二十七年まで約一万人の方について調査させていただきました。それから近藤正二先生(一昨年に亡くなられましたが)、東北大学の名誉教授をしておられましたが、一生かかって健康長寿村はどんな食生活をしているかを調べられました。また三十数年かかって千の健康長寿村や不健康短命村をご自身で廻られました。私はこの先生とは別に患者さんについて全部その食生活や生活条件を調べたのです。それから健康な村を訪ねて行ったのです。その結果が近藤先生のご発表とぴったり合いましたので自信を得ました。そして正しい生活をすることによってお医者さんのいらない生活をしようということを提唱しました。私の患者さんにいろいろご説明申し上げて生活をご指導しますと本当に病気をしなくなるんですよ。非常に結構なことで、私はうちの患者さんがいなくなったら商売替えをしようと考えていたのですが、なかなか簡単にはそうはなりません。

 

 

農業がくるっているために

 

 

ところが私のいう理念の食生活をしていたら今度は農業がくるっているために農薬中毒になることがわかったのです。
そこで私は昭和二十七年から農業の勉強を始めたのです。今の農学は医学と同じで工学的な方法による研究なので、私は生態学的な独自の方法でしました。それをやりながら臨床をしていますと、大変なことになっていることがわかってきたのです。
ノアの洪水に匹敵するような毒の洪水が今、日本にやってきている。これは大変なことです。水の洪水は目に見えますが、毒の洪水は見えないのです。今皆さんのまわりで三十や四十でガンになったり、肝臓病や白血病で死んでいく方が多いでしょう。あれがノアの第二の洪水の溺死者ですよ。またこの頃子どもの死亡率でも一番高いのはガンになっています。これは大変な事態です。それが奇形になり、対抗性疾患になりしてやってきています。
社会を指導しているのは政府でしょう。その政府が今一定の目標を持っていないと思うのです。国民の本当の安全ということを思っていない、と云うことは生命ということを扱う学問がないのです。そしてこの社会が生命ということを無視してどんどん進んでいるわけです。例えば食品に添加物を加えると腐らなくなって食品企業がうまくいく。これはその通りです。生命を抜きにして進んでいる、しかし生命が持たない。企業がどんどん大きく社会を動かしていって、国民の生命が無視されてしまっている。今国民は確かに生命ということを知らないですよ。便利であればよいと思っている。
経済問題、外交問題などはやかましく言うが、もっと大きな問題、自分達の生命が根本から腐ってきているということには、政府もちっとも本気にならない。世論も本気にならない。これは生命を無視して発達してきた社会、教育あらゆるものの明治百年以来の歴史がこうしていると思うのです。このことをどうぞ振り返っていただきたい。孫や子どもの時代には日本はどうなっているかわからないのです。

 

 

現在の栄養の摂り方は間違っている

 

 

今の栄養の考え方は病気を作る栄養で、間違っています。私達の健康を支える柱は、カロリー、タンパク質、脂肪、炭水化物、ミネラル(カルシウム、鉄など)、ビタミン、X要素といって酵素とかまだ現在の医学でわかっていない要素、こういうものです。ところが今の栄養学は、今から百年ほど前にホイトやループラが言い出したものの考え方であって、人間の肉体の分析からできているのです。そしてカロリー、動物性蛋白が非常に重く見られています。ですから学校給食でも栄養士さんは動物性蛋白とカロリーをまず考えています。脂肪、澱粉や砂糖も沢山とる。このような食生活をしていますと、ミネラル、ビタミン、X要素が少なくなり、血液が酸性化して黒く濁ってしまい、非常にバイ菌に対する抵抗力がない、骨が軟らかくなる、精神が不安定になる。そして新陳代謝障害を起こしていろいろな病気の発生源となっています。このような皆さんが栄養と思っている食事のパターンは間違っているということをまず申し上げます。
中心にカロリーと動物性蛋白ということは、白米、白パンと肉類が今の日本人の食事の中心になっているわけです。野菜、果物は疎遠になっています。そしてコーヒーや菓子、ジュースなど大量の白砂糖をとっています。私は三十五年間診療生活をつづけていますが、ずっと患者さんの食生活を調べてきました。そして今の医学で気付いていないことを知っているのです。
この頃の子供は骨、海そう、野菜などは殆んど食べないでしょう。殆んどご飯とハム、ソーセージ、ハンバーグ、そしてチョコレートとチューインガムばかりを食べています。こういう子は歯の悪い子が非常に多い。みそっぱで歯が消えてしまった子もいる。今子供の虫歯は百パーセントですね。私はお母さんにいうのですが、これは歯だけではない全身の骨もこのようになっているのですと。子供はかわいそうになにも知らないのです。
このような食事パターンは本来の日本のものではないのです。ヨーロッパの食事を無批判にまねをして、日本の民族性、或は気候、風土にあわないものなのです。日本の国土の特長はまず火成岩性酸性土壌であって、ミネラルが非常に欠乏している土地なのです。だから水がおいしいのです。この国土に住み、そこに育った作物を食べている民俗はどうしてもミネラル欠乏を起こしやすい。それで我々先祖は直観と経験から世界一海そうを沢山食べる民俗になったのです。海そうは日本の国土に欠乏しているミネラルをきわめて豊富に含んでいます。そして蛋白質の一番大事なものとして大豆を食べました。大豆はカルシウムの多いそしてビタミンの豊富なアルカリ性のいい蛋白です。こういうものを蛋白の主体にもってきました。
(以下、次号に続く)

 

 

これも合成洗剤です!

 

 

最近テレビのCMで「無添加」「環境にやさしい」「すすぎが一回」をうたった「さらさ」「アタックNEO」などの洗剤が売り出されています。インターネットを見ていても、赤ちゃんがいる若いお母さんやご自身がアトピーなどで辛い思いをしている方が「やっと安心して使える洗剤が安価で買えました。」というコメントを寄せています。では、これらの本当に安全なのでしょうか?
答えは「No!」です。「無添加」というと、なんだか害のあるものが無添加のような印象がありますが、成分表示をよく見てみると、無添加なのは漂白剤や蛍光剤、着色料が入っていないというだけであって、ここにも実は合成界面活性剤が使われているのです。これは合成洗剤です。
では、石けんと合成洗剤の違いは何でしょうか。
「石けん」と「合成洗剤」、どちらも用途は「汚れを落とす」ということですが、実は大きな違いがあります。石けんは人と環境に優しいのに比べ、合成洗剤は環境負担が大きく、肌荒れの原因にもなります。石けんはパーム油、オリーブ油などの天然油脂とアルカリで作られていて、川や海に流れても食用石けんとなり、微生物や魚の餌となって分解されます。そのため、石けんは水中に残留することがないので川や海を汚しません。一方、合成洗剤は主に石油を原料に合成界面活性剤など、いろいろな化学物質を混ぜて作られています。これらは川や海で分解されず、生物に悪影響を与えます。事実、合成洗剤が大量生産され始めたころ、泡公害や水道汚染などの問題が起きました。しかし、原料が植物性であっても安全であるとは言い切れません。「ヤシ油が原料だから安全で環境を汚さない」をセールストークにした合成洗剤もあります。この植物性油脂を原料とする合成洗剤には高級アルコール系と呼ばれる合成界面活性剤が主成分として使用されています。これは、ヤシ油などの天然油脂からも石油からも製造することができます。このように原料が植物性油脂であっても、合成界面活性剤として製造されれば、必然的に石油から製造されたものと同じ化学的性質をもってしまうのです。
石けん以外の洗浄料に使われる合成界面活性剤は、肌や髪のタンパク質と結び付く力が強く、浸透力があります。そのため、中々洗い流れず、肌や髪に残って、体内に蓄積、浸透してしまう怖れがあります。洗い上がりが必要以上にしっとりしているのは、合成界面活性剤が肌に残っているからなのです。その点、石けんはタンパク質と結び付く性質がないので、肌や髪に残らず水で洗い流せて、洗い上がりはさっぱりします。
先ほどの合成洗剤には洗浄成分としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、LASなどが配合されています。でもこの成分を見ただけでは本当に安全なものかどうかは消費者には分かりにくいものです。
このポリオキシエチレンアルキルエーテルは、非イオン系の合成界面活性剤で、国の化学物質排出管理法という法律により、「第一種指定化学物質」高濃縮性及び長期毒性又は高次補食動物への慢性毒性を有する化学物質、という指定を受けています。
次のLASは直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの簡略名です。これは表示を”LAS”と簡単にし、一見すると合成界面活性剤とはわかりにくくしてありますが、実は最も毒性が強く、分解されにくいため魚介類や微生物、藻類への影響が大きい化学物質です。
「すすぎが少量で済む」のは界面活性剤の量が、従来のものの2倍であるというだけのことなのです。
これらの洗剤は従来の製品とそれほど変わらないにもかかわらず、クエン酸の力を強調したり、曖昧な成分表示をすることにより、消費者に「環境や健康によい」洗剤であるように錯覚させるといったことが行われています。そのようなニセモノの多い中、私達は安心して毎日使える洗剤を見極め、次世代にも安全な環境を残さなければなりません。
 

 

 

農場便り 2月

 

深々と冷える2009年12月31日、間もなく新しい年を迎える。一年間無事に過ごさせていただいた感謝と新年に向けての決意を願い、鐘をつき合掌する。本堂では年越しのお経が上げられ、僧侶の読経と鐘の音が重なり合い、寒中の夜空に美しく響き渡る。その美しさは大晦日の夜テレビから流れる恒例のベートーヴェンの第九と重なる。境内ではたき火が焚かれ、燃え上がる炎は天をも焦がす勢いで燃え盛り、多くの人が火を囲み暖をとる。今年最後のお参りを終え帰途に就く。窓の外は強風が吹き、ガタガタと雨戸を叩く音を耳にしながら畑に残してきた野菜を気にしつつ床に就く。
年明けは、近年にない冬型の厳しい元旦となった。長く伸ばした水仙の葉は所々折れ、膨らんだつぼみは強風にあおられ、左右に大きく揺れる。外は身を切るような冷たい風が吹く、一方室内は心地よく暖められ、家人が新年の祝いの準備を進める。年を重ねると共に年の初めのこのしきたりが次世代に受け継がれることを切に願う。
正月の休日は足早に過ぎ去り、仕事始めを明日に控える。仕事への緊張と夜型になった生活のリズムが災いし、なかなか寝付かれないことは毎年同じ繰り返しである。いよいよ仕事始めの日、職員が一堂に会し新年のあいさつを交わし、大掃除に取りかかる。一年間のほこりをきれいに拭い磨き上げる。夕方、また明日からの頑張りを誓い、解散。
あくる日の農場初日、ゲートを開け、畑を見回せる位置にて、今年一年素晴らしい作物を育ててくれる大地に合掌。その後収穫へと作業は進み、時折吹く風が頬を刺す。野菜を寒さから守るため頭からすっぽり被せた被布用資材の中で固く大きく育った白菜をカマで切り取る。大きな葉を外し美しく整える。外葉の内側で越冬していたテントウ虫やクモが顔を出す。そっと捕まえ、温かい被布の中へと戻してあげる。
1月10日はえびすさんの日、神社にはたくさんの人がお参りし、熊笹を買い求める。大きな鯛や大判小判、金色の米俵、昔の人々は豊漁や五穀豊穣を願って信仰してきた。五穀豊穣を願う時代には米は経済の中心であった。しかし今現在、米は余剰品となり国のお荷物の一つとなっている。毎年無理な減反を余儀なくされ、米価の引き下げは農民の首を絞める。
今回は、太古の時代より日本人の主食であり、魂とも云える存在であった米を紹介させていただく。
「八十八の行程を経て作られ、八十八の神が宿るので、八十八と書いて米と読む」ともいわれる米の原産はいまだはっきりとされていないが、中国の江西省や湖南省では一万年?二万二千年前に焼畑式で栽培されていた。その後中国南部より東南アジアへと広がり、中国中北部、南アジア、そして日本へと伝わった。九州説、大和説と所在地をめぐり論争になっている邪馬台国では、すでに稲作栽培の農業社会が完成されており、日本へは、縄文時代中期に中国より台湾、琉球、南九州に伝わりその後広い地域に伝来したとされている。米の90%はアジアで生産され、消費されている。最大の生産国は中国で、インド、インドネシアと続く。
米に含まれる主な栄養成分は炭水化物で、その他タンパク質、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB1、ビタミンB2、食物繊維が含まれている。精米の度合いによって、白米と玄米に分けられ、糠を取り除かない玄米には、白米よりもはるかに多くのビタミン、ミネラルが含まれ、ビタミンB1は白米の4?5倍、ビタミンEは3?4倍等で栄養価に富み、健康に良いとされている。前理事長は出来るだけ白米より5分搗きや7分搗き、時には玄米を勧めていた。米を食すると太る、と若い世代は米食を避けるが、ご飯は粒食であり、インシュリンの分泌刺激性が弱いため太りにくい。米のでんぷんは、体内ですぐブドウ糖になり脳のエネルギー源となる。米を取り入れた食生活は、米自身に体に必要な栄養素がバランスよく含まれている食品であるということに加えて、主食の米におかずを組み合わせることで更にバランスの取れたものになるというメリットがある。これからの長い人生に上手に活用すべき作物である。「粗末にするとバチが当たる。」と幼少のころ親から教えられたものである。あり余る米は古米、古古米となり味やつやの低下、臭いなどがあるから嫌われる。そこに出てきたのが精米剤であり、これを使うと古古米を新米に化けさせることができる。成分はプロピレングリコール、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルである。これらの中には発がん性が疑われているものがある。今、世間で流行りのコンビニおにぎりや弁当等の外食産業のご飯を炊くときにもクロレラ、Lグルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムやパパイン、スピターゼ等酵素が使用されている可能性が高く、輸入米にも同じような物が使われていることは否定できない。これらの炊飯添加物には、発癌性のほかに農薬、化学物質、脂肪などが吸収し易くなる、湿疹、高血圧の原因等を引き起こす恐れがあるといわれている。当会のお米は、完全無農薬で堆肥のみにより栽培されており、安全性についてはお墨付きである。安全な米中心の食生活を送るために是非ご利用いただきたい。
海外貿易の均衡是正に、まず農産物の自由化を進めてきたのが国策であった。自由化により価格破壊は起こり、生命の源である「食」が今、危険にさらされている。それでは国内産であれば安全、とは決して言えないが、海外からの農産物は今や危険極まりないものとなっている。国々によって農薬使用の基準値が違い、日本では禁止されている農薬も使用可能となっている国も少なくない。使用する人々の農薬への認識の低さ(国内でもあり得る)、運送の際のポストハーベスト、遺伝子操作作物も又危険なものである。今では一般市場で販売されているものの殆どが毒と化してしまった。これらの事をお考えいただき、日々健康な生活を過ごしていただきたい。
仕事始めの一日も暮れようとしている。低気圧による風はまだ強く、日が落ちる頃には気温はグッと下がる。収穫を終え、トラックの荷台には大量の野菜が積まれた。販売所に着き、荷物を下ろす。職員からの「お疲れ様」の温かい一言にほっと一息。終業の挨拶をし、よそ見も寄り道もせずまっすぐ帰宅。温かい部屋には夕食の香りが満ち溢れ、空腹感が一気に襲う。お正月にゆっくりしていた時にはない、労働の後の疲労感が心地よく、大寒でもお構いなしに汗をかく。まず入浴、その後正月のご馳走とは異なる野菜ばかりの食卓を目にした時、思わず顔がほころぶ。楽しみの麦酒に、にっこりエビス顔。
慈光農園の一年が始まった。
本年もどうぞ宜しくお願いします。

 

 

 

ホテイ腹の農場担当より