TOP > 慈光通信 > 慈光通信 第211号

慈光通信 第211号

2017.10.1

患者と共に歩んだ無農薬農業の運動 11

 

前理事長・医師 梁瀬義亮

【この原稿は、1991年1月 日本有機農業研究会発行の「梁瀬義亮特集」に掲載されたものです。】

 

 

食生活でこれだけは注意

 

もう一ぺん繰り返して申しますと、私たちの食生活で注意しなければならないことは、一つは欠乏であります。その欠乏は二つの方法によって起こってくるのです。
一つは、材料や組合せ方の誤りです。現在のように、白米や白砂糖や肉を多くして、野菜や海藻を少なくすると、ビタミンやミネラルやいろいろの酵素が欠乏して病気になります。もう一つは、たとえ材料の組み合わせが正しくても、農法が誤っている為に材料自身に欠乏があって、そのために欠乏が起ってくることです。第二に食生活で注意しなければならないのは、毒物です。農薬とか添加物等・・・毒物をさけなければなりません。かといって、東京のみなさまが、すぐに明日から無毒な農作物は手に入らないでしょう。
そこで神経質になってもらっては困ります。私たちには、相当強い抵抗力と適応性があるのです。
同じように水銀の入った物を食べていても、水俣病になった方はそう多くなかったし、同じカドミウムの入った物を食べていても、神通川流域でイタイイタイ病になった人はそう多くなかったのです。
ですから、今申し上げたことを参考にしていただきまして、海藻とかいろいろなものでミネラルを補強し、白砂糖を慎むとか、肉食を適当に制限するとかに注意していただきますと、毒物に対して相当抵抗力があるということを知っていただきたいのです。そうクヨクヨしないで下さい。
それからもう一つ、こまめに運動をすること、これが非常に毒性をなくす道なのです。その運動をあまりする時間がないお方は、とっとっと歩くことです。その歩くことのできないお方は足踏みをすることです。手を広く振って、膝を水平まで上げて朝晩、一〇〇回やると非常にいいのです。それから
手のひらで全身を心臓に向ってマッサージをする、これはすばらしく効果があります。
私は子どものころ、「弘法大師様の秘宝」だといって、疲れたら耳をマッサージしたら治ると教えられましたが、耳だけでなく、からだ、首、そして標準は心臓に向って手のひらでマッサージをすることが、この毒の多い世の中でせめてもの解毒作用をするものであると、私は臨床効果から信じておるのです。
以下、次号に続く

 

野菜くずで極上だし

今、野菜くずで作る「ベジブロス」がじわじわと注目されているのをご存知でしょうか?
vegetable(野菜)+broth(だし汁)でベジブロス。ベジブロスは、普段は捨ててしまう野菜のヘタや皮、種、根などの野菜くずを煮出して作る「野菜だし」です。
ベジブロスに利用できない野菜は特にありません。人参、玉ねぎ、ごぼうのヘタや皮、香りの良いセロリやパセリはもちろん、ピーマンの種も立派な材料です。より多くの種類の野菜を入れるほどおいしくなるのが、ベジブロスなのです。

 

利用できる野菜

先述のように、ベジブロスに利用できない野菜は特にありませんが、向いているのは、煮物にしておいしい野菜。野菜の皮やヘタ、切れ端や触感を良くするためにむいた皮、かぼちゃやピーマンの種やワタ、トマトのヘタ、ネギの硬いところなど何でも使えます。「こんなものまで大丈夫?」と思っても捨てないで、料理をするたびにきれいに洗ってから、冷蔵庫や冷凍庫に貯めていって下さい。
何でも使うことはできますが、アクの強いもの・苦みがあるもの・臭いの強いものはスープの味が悪くなるので多用するのは避けた方が良いでしょう。
菜の花、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツの芯などは長く煮ると独特の香りがあるのであまり多く入れない方がいいかと思います。また、じゃが芋の芽などの有害な部分は使いません。

 

作り方
1.昆布7?を一晩浸した水1リットルに良く洗った野菜くず250g位を大きめの鍋に入れる。
2.中火で沸騰させたら弱火にして、酒小さじ1と塩少々を加えて約20から30分煮てザルでこす。
冷めたら冷蔵庫か冷凍庫で保存する。
出来上がったベジブロスは野菜の香りと味が際立ち、かつまろやか。うま味があってコンソメスープの様です。
・洋風のベジブロスはセロリとローリエを加えるのがおすすめ。
・野菜くずは細かく刻むとうま味がより多く出ますが、だしが濁るのでお好みで。
・強火で煮込むとえぐみが出るので必ず弱火でコトコトと。
・お酒を入れると臭みを消して、野菜のうまみを引き出してくれます。
ベジブロスの保存は、冷蔵庫で3日間程度、製氷皿に入れて冷凍しておくと好きなだけ使えて便利です。

 

ベジブロスの使い方
*シチューやカレー、ラーメンを作る時の水代わりに
*スープやポトフのだしとして
*肉じゃがやおでんなどの煮物に

 

ベジブロスは、野菜ならではの甘味や風味が染み出した、まろやかな味わいが特徴で、和食でも洋食でもどんな料理にも使え、味に深みが出ます。
皮やヘタ、根元など、どの部分も活用でき、ほぼ野菜を丸ごと無駄なく使いきることが出来ます。もともと野菜の皮は外の刺激から体を守り、ヘタは成長の要にあたる部分で、様々な栄養分が含まれています。そのため野菜くずから作ったベジブロスには抗酸化作用があり免疫力を高める栄養素が豊富に含まれています。ベジブロスにすると野菜の栄養分を余すことなく摂取することが出来るのです。
いつも、もったいないけれど使い途がない、と思って捨ててしまう野菜くず、有効活用してみませんか。

 

農場便り 10月

季節はゆっくり秋へと向かってゆく。稲穂が一面に黄金色になった田んぼが、一枚、また一枚と刈り取られてゆく。刈り取りを終え、寂しくなった田んぼの上を真っ赤なたくさんのトンボが飛び交う。
台風が去った翌日の9月18日、農作物への被害もなくホッと胸を撫で下ろす。夕刻、台風の大粒の雨や強い風にも負けることなく、残されたあと幾日かの生命をふり絞るかようなツクツクボウシの寂しげな羽音が、深い谷間に響き渡る。草かげでは、今が盛りと虫の音がコンツェルトを奏でる。バイオリンはスズムシ、ビオラはウマオイ、チェロはコオロギ、最後に低音を響かせるバスは食欲の秋に反応する私の腹の虫、これから約一ヶ月間、秋の夜長を美しい羽音で楽しませてくれる。
秋は人の心を感傷的にする。物思いにふけり、過去を振り返る。このような反省は人を成長させるが、「私には今日も反省の色なし」。とは言いながらも今回は春から夏、そして秋冬作を振り返る。
5月、6月と2度に亘り播種を行ったきゅうり、5月蒔きは順調に育ち、朝夕、たわわに実った実の収穫を行う。時々、農道を通る農家の人にお褒めの言葉をいただく。皆さんが口をそろえて出る言葉「消毒(農薬散布)しないでよく作れるんだな」の一言。一般栽培では「農薬ありき」が定石となる。6月下旬に播種を行ったものは、5月蒔きに比べて収穫期が短く、気温が少し下がると一気に終盤を迎える。
きゅうり栽培は、春の花が咲き亘る4月、栽培予定地を堆肥で土を肥沃にし、畝を立て、支柱を立てネットを張る。「苗の定植までにネットを張るまでは」と思っていたが、他の作業に手を取られ、定植後の作業となってしまった。「来年こそは」と誓いながら早やウン十年、来年の通信にもまた同じことを書くことにならぬよう願う。
シーズン中ずっと続く1日2回の収穫は大変ではあるが、きゅうりは当園の得意とする作物。きゅうりと同じく夏を代表する作物のナスの栽培は、ここ2年ほど失敗がちに終わり反省。本年は作付け法を変え、ナスは順調に育った。短型、中長型、長型と3種類を作付け、強くよく育ち多収の長ナスは軟らかくて美味しいが、見た目で今いち人気がなく、来年は中長ナス一本に絞り作付けを行う。ナスは、一般栽培では非常にたくさんの農薬を散布しなければできないため、無農薬栽培のナスは難易度の高い作物でもある。協力農家と力を合わせ皆さまにたくさんお届けできた事を嬉しく思う。
3月播種を行った夏キャベツ、元来キャベツは冷涼な気候を好み、この地では晩秋から初夏までの栽培とされている。この地で夏採り栽培はできないものかと試行錯誤を重ね、何とか8月初旬までの栽培を行い収穫に至る。適応する品種は、他の品種に比べ葉が厚く少々固めとなるが、夏作の無農薬栽培では致し方なく、あとは皆さまの調理の腕前にお任せするとして、おいしくお召し上がりいただきたい。
7月中旬に葉菜を、と大和真菜の栽培に挑むも、見事憎き病害虫に攻め込まれ、落城を余儀なくされた。5月に播種をした小松菜、大和真菜はこれでもかと言わんばかりにたくましく育ち、少々出来すぎる程であったが、一ヶ月遅れで播種をした分は散々な目に遭う。何とかこの時期にと畑一面に育った作物を思い描き播種をしてみたが、やはり適地適作を無視した結果、この有様である。見るも無残な姿の葉物は、力強いエンジン音をとどろかせたトラクターによって一気にあとかたもなく土の中にすき込まれてゆく。時間をかけて栽培された作物はあっけなく地上より消えてしまった。
すぐそばに水路がある畑では、5月に定植した里芋、山芋、大和芋が順調に育ち、里芋の身丈は2mを超えるものもある。大量の堆肥と梅雨明けと同時に始まる畝間への水入れは、週に2回里芋の畝の間を勢いよく流し入れる。同様に山芋、大和芋にも週一回たっぷりの水分を与える。この2種類の芋は水を入れた後の水分管理を必要とする。山芋栽培は、今までネットにツルを登らせていたが、黒雲迫り夕立になった時に吹き狂う強風にネットが倒され、親ヅルが傷められたことがあった。そこで、本年はトンネル用の太い支柱を利用し、そこにツルを這わせることにした。現在、繁茂したツルは畝全体を覆う。これまた順調に育った山芋を見ながら、秋からの大量に収穫する姿を思い浮かべる。(取らぬ狸の皮算用)夏作の果菜の出来は、トマト以外は水分管理に左右される。
水分といえばセロリが思い浮かぶ。5月20日播種、8月9日猛暑の中の定植。90%以上の苗は焼き尽くす勢いの日射しにも負けることなく根を伸ばし元気に育つ。これも大量の水のおかげ。現在40?位までの大きさに育ち、除草後には御馳走の油粕をたっぷり根元に与える。これもまたみずみずしく、香りの高いセロリの丸かじりを夢見る。お隣の金時人参も同時に水をもらってすくすく育つ。無事に育って、お正月の祝いの膳に色を添えることが出来るよう願う。
7月下旬より逐次播種を行ってきたキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、白菜は防虫ネットを蚊帳のように張り、害虫から幼い苗を守る。8月21日、7月に播種をしたキャベツ苗の定植を行う。この時期の日射しは尋常ではなく、「おそらく駄目だろう」と半分あきらめ気味で定の定植作業。その後、毎日手がけで水を与える。夏の害虫の攻防は手強く、これでもかと次から次へと押し寄せてくる。それでも「なんとかなるサー」と作業をしていると、活着した苗の何パーセントかは駄目になったが、残りは何とか無事に育っている。
次から次へと定植は続き、後になるほど元気よく育つ。キャベツは3種類の種を使用する。キャベツの次はブロッコリー、市場では近年ブロッコリーの需要はうなぎのぼりといわれている。栄養価の高さが評価され、ガン細胞の抑制に働くとの事。しかし、ブロッコリーはキャベツ以上に気温に敏感で、収穫期はキャベツより短いのが残念である。出来るだけ早くと7月14日に第一弾を播種、その後何度かに分けて播種を行う。できる限り長く食卓にお届けできるよう努力する。カリフラワーはブロッコリーに比べいまいち人気がない。しかし、私の大好きな作物であるゆえ少しだけ栽培を行う。
8月、お盆も近くなると白菜の播種が始まる。キャベツ、ブロッコリーと同様に、私の太短い指で一粒一粒トレイに細かい種を落としてゆく。盛夏に仕立てる苗は、苗場で出来るだけ大きく育て、外敵からの攻撃に負けない体を作っておく。そのためには、128穴トレイで発芽をさせ、根が育って土の形が崩れなくなった時点でポットに一本一本植え替え、根を作りたくましく育ててゆく。使用する土は有機栽培用の培土である。夏の育苗はすべてポット上げを行う。白菜も早採りはポットに上げる。ポット上げは時間がかかるが、この方法が無農薬栽培ではベストであると考えている。アキアカネの飛ぶ初秋からは、トレイで育った小さな苗は、直接畑に定植をすることになる。晩秋に収穫をするキャベツ、ブロッコリー、白菜の栽培はたくさんの問題点を抱えるが、季節が進み、冬の収穫になればリスクも少なくなり、栽培もし易くなる。ただ、どちらの栽培に於いても、後から後から顔をのぞかせる雑草とは孤軍奮闘しなければならない。白菜は極早生から晩生まで栽培を行い、11月から3月中旬までの収穫を予定し、2か所の畑に数多くの子苗の定植を行った。「一日も早く涼しくなり、コオロギやバッタ、それに甲虫類の食欲が減りますように」と祈る日々を送る。
冬の食卓を賑やかに飾るレタス、大根、カブその他の多種の冬野菜は、赤とんぼの飛び交う畑で元気に育つ。その片隅には来年6月に収穫する晩生の玉ねぎが土の中から芽を出す。来月にはエネルギーのかたまりであるニンニクを植え付ける。秋とはいえ、今現在は作業着の背中に汗がにじむ。昼の長さにげんなりした夏の作業に比べ、秋は日の入りが早く、終わりの見えない作業に追われる。
夕方、日が山の裏に姿を消し、涼しい風が秋草を揺らす。秋の虫が美しい羽音を奏で、疲れた身体を癒してくれる。刈り取りを終えた田のあぜには真っ赤な曼珠沙華の花が咲く。その色は、私に甲子園を埋め尽くした広島カープの帽子の色を思い起こさせる。目に映る広島カラーは敗れ去った猛虎の祟りであろうか。
秋の夜、夕食後に家人とウォーキングに出かける。夜空には細い三日月がまもなく西の空に沈もうとしている。途中のお宮の階段を走って上る。ゴールのお社前で息は絶え絶え、脈拍は異常に早く打ち半死状態。秋の収穫のお礼にお社に手を合わせて祈る。ついでに数えきれないほどのお願いも口走る。帰り道、街灯に照らされた街路樹のイチョウがボーッと浮き出て見える。根元に目をやると、所狭しとギンナンの実が道を埋め尽くす。実からはギンナン特有の鼻が曲がるほどの悪臭が放たれる。隣を歩く家人は、迷いなくポケットからサッとビニール袋を取り出す。「なんと準備の良いこと」2人で路上のギンナンを無我夢中で拾い集める。その姿たるや野獣が獲物に群がるが如し。袋いっぱいに拾ったギンナンはバケツに入れ、水を張り、果肉を腐らせて種だけを取り出す。その後、乾燥させて食卓やおせちに登場する。秋のウォーキング中の出来事、秋の神様からの授かりものとしてありがたく頂戴する。
昼間の喧噪とは一転、ススキの穂が夕空に静かに美しく輝く。大きな株から少し穂をいただき、花瓶に生ける。まだ青い山栗の枝が秋の彩を添える。
「秋深し となりは何を する人ぞ」
静まり返った夜の空気を静かに吸い込む。更けゆく秋の香りが胸いっぱいに広がる。

 

食欲の秋 いやいや食欲の四季の農場より